Assyrtiko 2018 Mylonas Winery
◆ミロナス・ワイナリー
ワイナリーの歴史は、東アッティカのケラテア地方で「アントニス・ミロナス」が1917年にブドウ栽培とワイン造りを主な職業とするところから始まります。当時はワインを仕込むためのステンレス製のタンクは広まってはおらず、ギリシャのワインらしくアンフォラでブドウ果汁を発酵させていたそうです。
その後、ワイナリーは「アントニス」の息子「ディミトリス・ミロナス」へ。「ディミトリス」は、ワイナリーの伝統を引き継いだ上で、新しいブドウ園を購入し、同時に小規模ながらも近代的なワイナリーを建設。ワイナリーでは「アントニス」、「タソス」、「スタマティス」の三人の息子が幼い頃よりブドウ畑で遊び、土や天気、風を観察しながら成長。ブドウ樹との触れ合いの中で、剪定などを学び、ブドウ畑にまつわるすべてが彼らの一部とも言えるまでになり、ごく自然に彼らがブドウ栽培とワイン醸造を職業とするまでに至りました。「スタマティス」は化学を、「アントニス」はワイン醸造学を、「タソス」は経済学を、それぞれワイナリーのさらなる繁栄のために学びました。
2000年に「ディミトリス」が亡くなると三兄弟による経営が始まります。祖父から父へと受け継がれるときと同じように、彼らも父から引き継ぐと同時に、ワイナリーをさらに一歩進め、進化させる責任をも引き継ぎました。その結果として彼らは新たに小規模でありながらも最新鋭のワイナリーを誕生させ、ワイナリーで生み出されるワインを商標化。2006年に初めて公式にリリースされた銘柄はアッティカのワインならではに「Savatiano Mylonas Winery」でした。
◆三代目「スタマティス・ミロナス」
現在のワイナリーの当主である「スタマティス・ミロナス」は、大学で化学を専攻しながらも卒業後に「WSET(ワイン&スピリット教育トラスト)」によるワインの最上位の資格「ディプロマ」を取得。「WSET」は、ワインやスピリッツの流通業者のレベルアップを目的とした教育機関のため、ワイン生産者がこの資格を取得するというのは珍しいとのこと。ですが、「スタマティス」は「科学的な根拠は当然のこと、自分自身のテイスティング能力でワインを見極めたい」との想いから難関である資格に挑戦したそうです。
◆アッティカのブドウ栽培の中心地「メソギア」
ゲラニア山脈やキサイロナス山、パルニサ山、ペンデリ山を擁する自然に接した大きな半島で、南側全体が海に囲まれ、ブドウの生育に有益な海風が吹き込みます。山に近い土地は暖かく乾燥した気候となり、それらすべての要素がブドウ畑の土壌の多様性と組み合わさることで「アッティカ」は、ギリシャで最も重要な土地のひとつとなっています。
このワインに100%使用されている「アシルティコ」が栽培されているエリア、東アッティカの中央部を指す「メソギア(=Μεσογαία=Mesogeia)」は、「地中海」を意味するギリシャ語です。その名の通り、海からの潮風の影響を受ける白ブドウ栽培の好適地としてアッティカの栽培面積の大部分をこの「メソギア」が占めています。
◆特徴的なラベル
ミロナス・ワイナリーのWEBサイトに「Small Bird has interesting to tell.Take some time to listen.(小鳥にはいつも伝えるべき興味深い話があります。じっくりと聞いてください。)」との記述とともに特徴的な鳥の絵が現れます。これは、「スタマティス」がブドウ畑で仕事をしている間、野鳥の群れがそれに付き合うように餌を探している様子から浮かんだアイデアで、ワイナリーのマークやほとんどのワインのラベルに鳥が描かれることとなりました。
そんなワイナリーのマークやラベルを手掛けるのは、ギリシャで活躍するイラストレーター兼グラフィックデザイナーである「ネアルコス・ダスカス(Nearchos Ntaskas)」。ミロナス・ワイナリーとそのワインのイメージに新鮮なトーンを与えるため2006年の商標登録とともにワイナリーのマークを作成。ミロナス・ワイナリーの生み出すワインのラベルに描かれている、目を引く特徴的な絵もすべて「ネアルコス」によるものです。
このページでご紹介している「アシルティコ・ワイン」のラベルに描かれているのは「カエル」。ラベルを依頼する際に話したスタマティスの家族の話がネアルコスにおとぎ話を思い起こさせ、それが転じて「不思議の国のアリス」に登場する「フロッグ・フットマン(カエル従僕)」のモチーフが引き出されたそうです。頭にある王冠のようにも見えるものに、アッティカが擁する山々と現在ワイナリーを切り盛りする三兄弟をイメージ。閉じた傘がこのワインのドライさを、ブルーの体の色で清涼感を、赤い襟は果実味の豊かさを、蝶ネクタイがエレガントさを、それぞれ表現しています。
【ヴィンテージ】 | 2018 | 【容量】 | 750ml |
【原産国】 | ギリシャ | 【地方】 | アッティカ |
【地区】 | 東アッティカ | 【村】 | ケラテア |
【品質分類・原産地呼称】 | P.G.I. アッティキ | ||
【格付け】 | - | ||
【使用ブドウ品種】 | アシルティコ 100% | ||
【醸造・熟成】 | 醸造:ステンレスタンク | ||
【アルコール度数】 | 12.5% | 【色】 | 白 |
【種類】 | 白ワイン | 【味わい】 | 辛口・フルボディ |
グラスに注がれた「ミロナス・アシルティコ」は、微かにグリーンを溶け込ませたごく淡いイエローの色調を呈し、若々しさと健全さをありありと伝えます。艷やかな光沢で覆われた液面に虹色を伴ったシルバーの筋を鮮やかに走らせ、その奥からクリスタルのように澄んだ輝きを放ち、酸やミネラル分の豊富さを示唆。フレッシュな香味と引き締まった口当たりが展開されるであろうことが容易く想像できる外観です。
グラスから穏やかに立ち昇るのは、フレッシュな柑橘系の果実を想わせる香りとミネラル分によるニュアンスが溶け合った、シンプルでピュアな香りの印象に複雑さがちょい足しされたような芳香。ライムを想わせるグリーンなイメージの柑橘果実感やレモングラス、ほんのりと甘やかな香りにはジャスミンのような清楚なフローラル感、そして、ミネラル分からの濡れた石のようなひんやりとしたニュアンスがこのワインの香りに鮮やかさと落ち着きを同時に与えます。
豊富なミネラル分によるものと思われる、円みのある、クリーミーとも言い得るほどのマイルドな口当り。また、ミネラル分はスマートな果実味を的確に引き締める酸味にも影響を与え、爽やかさが引き出されながらも柔らかな舌触りがあり、同時にさらりとして清々しく、ドライな飲み口を表現。口の中に広がるのはカモミールを想わせるビターなハーブ感。艷やかな香味に清涼感を纏わせ、しっかりと詰まった味わいを軽快に楽しませてくれます。
飲み落とすとミネラルの硬質感に引き立てられたビター感がさらに存在感を増し、より清々しさが引き出され、消え残る味わいを綺麗に洗い流していきます。涼やかさが引き出された後口に、レモンを想わせる艷やかな柑橘果実感が果てしなく長く、上質この上ない余韻をたなびかせます。
あまりにも豊富なミネラル感が「ぱりっ」とした質感のみならずクリーミーな舌触りまでもを与えた、フルボディな味わいを重々しくさせず、溌剌とした飲み口に柔和さを纏わせ、穏やかな香味に鮮やかさを引き出し、スマートでスムーズな印象で清涼感のあるビターな味わいを楽しませてくれるギリシャからの逸品「ミロナス・アシルティコ」。飲むほどに「塩パン」が食べたくなるような、ミネラル分からのソルティさとクリーミネスが美しく調和した辛口の白ワインです。この機会にぜひ、ご体験ください。