Savatiano 2017 Aoton Winery
◆AOTONなワインを目指して
古代ギリシャ語で「そのクラスの素晴らしい典型」を意味する「Aoton(アオトン)」をワイナリー名にもつ「アオトン・ワイナリー」。ワイナリーのニ代目オーナーであるギニス・ソティリスは、ギリシャ唯一の醸造学校であるアテネ農業学校を卒業後、祖父からワイナリーを引き継ぎました。ギニスが造った最初のヴィンテージは2007年。その後、着々と現在のような自然な醸造スタイルを確立。ワイン造りへの強いこだわりもつ彼が満足のいくレベルのワインが出来上がったのは2015年。また、自ら栽培する原料ブドウに対するこだわりもひときわで、翌2016年は納得のいくブドウが収穫されなかったため、自らで仕込むことをやめコーペラティブ(=ワイン醸造販売協同組合)へすべて売却してしまったほど。そんなギニスによって無事仕込まれることとなり、リリースされた本2017ヴィンテージです。
◆古の土着品種「サヴァティアーノ」
ヨーロッパの国々の中でも最も古くからワイン造りが行われてきたギリシャ。その歴史は5000年前にまで遡ることができます。紀元前16世紀と伝えられる最古の足踏み式破砕機が残されているなど、ヨーロッパのブドウ栽培や醸造技術はギリシャがつくりあげたものであろうと言われています。この度ご紹介させていただくワインに使用されているブドウ品種「サヴァティアーノ」は、4000年もの歴史のあるギリシャの土着品種。主に松脂を加えて仕込まれるギリシャの伝統的白ワイン「レッチーナ」に用いらることでよく知られています。
◆「レッツィーナ」
「レッツィーナ」はそのまま「松脂」の意味を持つギリシャ語。松脂が加えられて仕込まれる「レッツィーナ」をストレートに表現するネーミングです。1トンのワインに対して最大1kgまで、というのが「レッツィーナ」の規定するところですが「アオトン・ワイナリー」の「レッツィーナ 2017」には、1000リットルの発酵中のワインに600gの松脂が加えられているそうです。
【ヴィンテージ】 | 2017 | 【容量】 | 750ml |
【原産国】 | ギリシャ | 【地方】 | アッティカ |
【地区】 | 東アッティカ | 【村】 | ペアニア(パイアニア) |
【品質分類・原産地呼称】 | P.G.I. レッツィーナ | ||
【格付け】 | - | ||
【使用ブドウ品種】 | サヴァティアーノ 100% | ||
【醸造・熟成】 | 醸造:ステンレスタンク | ||
【アルコール度数】 | 14.6% | 【色】 | 白 |
【種類】 | 白ワイン | 【味わい】 | 辛口・ミディアムボディ |
グラスに注がれた「アオトン サヴァティアーノ 2017」は、輝きに溢れる淡いゴールドの色調を呈し、その健全さをありありと伝えます。磨かれたかのように艷やかな光沢を纏った液体は純良なアルコール分と豊富なエキス分の存在を示唆。果実味に満ちた滑らかな舌触りを期待させる外観です。
注いですぐに嗅いだグラスから豊かに立ち昇るのは、明らかな松脂からの清々しい香り。接着剤のようなエステル感やガソリンのようなペトロール感。また、切り出したばかりの清々しい木材や、ニッキ飴のような甘くスパイシーなニュアンスに加え、レモングラスのような爽やかなハーブ感も広がります。さらに、グラスの中で静置させ時間が経過すると柔らかさが引き出され、あんずのような果実感も漂い、その複雑さを誇示しつつ、マイルドさもほのめかします。ひと嗅ぎして「うっ」となる…などと個性的な松脂感が際立ってアナウンスされる「レッツィーナ」ですが、こだわりの造り手「アオトン・ワイナリー」のワインならではに、このワインには適切に織り重ねられた要素の中に巧みに松脂フレーバーが織り込まれ、綺麗に纏め上げられている印象で、好みによるものは大いにあるものの、多くの方の好感を得られるのではないかと思えるような香り立ちです。
口当たりは滑らかで、濃縮感のある果実味がじんわりと柔らかく広がり、まろやかな酸味に相乗され、そのリッチさとマイルドさがより引き立てられている印象です。磨かれたように艷やかな感触の中に硬質なミネラル感がそっとほのめかされ、密度の高さを保ったまま軽やかな飲み口を表現。口の中に広がるのは、ライムのような清々しいビター感のあるグリーンなイメージの柑橘果実フレーバーと、ローズマリーのような薬草的な爽やかなハーブ感。松脂はボタニカル感としての存在感を示し、杜松の実的「ジン」を想わせる目の覚めるような爽快な香味をもたらし「レッツィーナ」感を心地よく楽しませてくれます。
飲み落とすと、じんわりと消え残るビター感が後を引き継ぎ、柔らかさを獲得しながら静かに解れつつ、優しい口溶けを展開。クリアな印象が引き出された後口には、カモミールティのようなビター感と香ばしさが調和した後味が表現され、静かに、ゆっくりと酸味の強い林檎を想わせるフレッシュな果実感の余韻を繊細に、長く、たなびかせます。
想像以上のエレガントさを楽しませてくれる、上質なサヴァティアーノの張りのある味わいに松脂のフレーバーが適切に加えられ、調和した”松脂ワイン”。他のレッツィーナを飲んで嫌いになったという方のリベンジの1本にも、まだ飲んだことがないという方のファースト・タイムの1本にも、お試しいただく価値があると迷わずオススメできる、優れた香味のバランスが美しく表現された「アオトン・ワイナリー」からの「レッツィーナ」の逸品です。この機会にぜひ、ご体験ください。